GALLERY&CAFE SOQSO

EXHIBITION

DEADKEBAB

2023.2.18(sat)-26(sun)

DEADKEBAB 『BUY or DIE』

架空のスーパーマーケット”BUY or DIE”を舞台に、言葉遊びを散りばめた商品をキャンバスに描写し、独特の空間を展開する。

会期:2023年2月18日(土)〜26日(日) 
定休日:火、水曜日
時間:11:00〜18:00

Profile
東京生まれ。武蔵美卒。アートワークを発表しながら、DEADKEBAB & PSYCHIC$のMCとして音楽活動も行なっている。
(“HUSTLER” “PUSSY CAT” 7インチレコード絶賛発売中。)

https://www.instagram.com/deadkebab/?hl=ja

INTERVIEW

DEADKEBABの作り方。「BUY or DIE」4000字インタビュー。

Photo:Satomi Yamauchi

伝説的なニューウェーブバンドDEVOのオープニングアクトでUSツアーに帯同するなど海外でも高く評価されたエレクトロアートパンクバンドTrippple Nippplesのフロントマンを経て、現在はHIPHOPユニットDEADKEBAB & PSYCHIC$のMCとして、またペインティングや立体物、映像を制作するヴィジュアルアーティストとしても活動中のDEADKEBAB。2月18日よりSOQSOで開催予定の個展「BUY or DIE」に向け、多方面にアウトプットするクリエイションについて訊きました。     Interview & Text / Tetsutoku Morita

 

本当と嘘が混じり合う、その感覚が好き。

ーーDEADKEBAB & PSYCHIC$は2022年に Wuut up, ma bitch? を配信、2021年にはHustler, Pussy Catをアナログ7インチでリリースし、最近は東京をベースに精力的にライブを行われていますが、どういった経緯で結成されたんですか?

 DEADKEBAB & PSYCHIC$を始めたのは2016年のお正月です。友達からライブを頼まれたんですが、以前やっていたTrippple Nippplesというバンドがストップしていたので、友人のPSYCHIC$が作るトラックに、ラップを載せたら面白いかなと思って声をかけました。

ーーPSYCHIC$さんは同年代なんですか?

 PSYCHIC$が4つ上です。NUMB TURNPIKEというニューウェーブぽいバンドをやっていてサンプリングのしかたとか独特で面白いんです。数年前からDJのALEXも加入し、一緒にトラック作ったりライブの時にスクラッチで参加してもらってます。

ーーDEADKEBAB & PSYCHIC$の曲も、すごく良かったです。DEADKEBABさんの声がトラックと馴染んでいて、洋楽の感じで聞いていたら、日本語のリリックがガツンと入ってきて、そこから広がる言葉のイメージが印象的でした。

 ありがとうございます。ずっと韻が踏みやすいから英語で書いてたんですけど、最近ちょっと日本語にしてみようかなと思って。
Photo:TOKYO DANDY

ーーご出身はどちらなんですか?

 東京の駒沢です。

ーー子供時代の思い出は?

 父はカメラマンで世界中を飛び回っていて、私が小学校に入る前から、一ヶ月間留守にして一ヶ月家にいるというような生活スタイルだったんです。マダガスカルとか、観光で行かないようなアフリカの奥地に行って、帰ってくると夜中まで外国の話をしてくれました。それを聞きながら、子供心に自分が住む世界とは全く違う風景や考え方の人たちが存在することをイメージしてたように思います。

ーーアーティストとしての原体験ですね。絵はいつ頃から好きだったんですか?

 絵は気づいたら描いていて、絵画教室にも通ってました。近所の友達が行ってて面白そうだし私もって、遊び感覚です。あと父が暇な時お題を出してくるんです。「食べてるニワトリ」とか。その言葉からイメージする絵を一緒に描いてお互い見せ合って、どっちが面白かみたいなこともやってました。

ーーそれも今に繋がるエピソードですね。

 そうですね。あとは中高時代は友達と好きなDVDを持ち寄ってお昼を食べながら学校でこっそり鑑賞したり

ーー映画監督では「ジョン・ウォーターズ」がフェイバリットだとか。

 めちゃくちゃ好きです。中学くらいから見てました。特に好きなのは「ポリエステル」って作品。すごく変わってて最初に「これは匂いがする映画です」みたいな解説があるんです。お客さんは事前にカードを渡されていて、上映中、画面の端っこに数字が出たら、カードに記された同じ番号を削る。すると映画のシチュエーションに合わせて、オナラとかシンナーの臭いがしたらしいんです。本当にみんな映画館でカードを嗅いでたのかな? とか想像しながら楽しんでました。

ーー虚実がわからない感じが良い?

 はい。本当と嘘が混じり合ってる、そういう感覚がたまらないんですよね。スパイク・ジョーンズの「アダプテーション」という映画も大好きです。主人公は途中まで仕事について悩んでる。とても現実的なストーリーなんですが、後半あるタイミングで、まったく別の世界に入っちゃう。フィルターが一個取れるというか。どっちの次元にいるのかわからなくなるような映画が好きです。

 

初パフォーマンスはゴム手袋に入れたカルーアミルクを撒き散らす

ーー音楽はいつ始められたんですか?

 大学に入ってからです。武蔵美だったんですが、学校よりも、新宿2丁目のパーティーに行って色んなセクシャリティの子たちと遊んでました。そこで意気投合した女の子2人と、私を含めて3人で何かやろうって話になったんです。パーティーにはテキーラガールが欲しいよね。だったら、偽物のおっぱいからビューンてカルーアミルクを出すと面白いんじゃないかって。

ーーそれでTrippple Nippplesという名前に。

 はい。最初のパフォーマンスは、伸びるゴム手袋にカルーアミルクを入れて3人で撒き散らすみたいな(笑)それを偶然見ていたオーストラリア人のミュージシャンが、この子たちに曲を書きたいという話になって。じゃあ一緒にやろうみたいな感じで始まりました。

ーー3MC+1トラックメイカーというスタイル。

 最初は遊びでやってたんですが、大学の交換制度で1年間フランスに留学したんです。ある日パリでパーティーに行ったら、偶然DJの女の子がTrippple Nippplesの曲を流してて、びっくりしました。聞いたらその子はダウンロードしていつもかけてるよって。その時は配信が今ほど主流ではなかったのですが、インターネットってすごいなと思った瞬間です。いろんな所で曲をかけてもらえるなら、バンドでツアーもいいんじゃないかと思いました。

ーー何年生で留学されたんですか?

 4年生です。だから就活とか忘れてたんですよ。他の人たちはみんな就職しちゃって私は溢れてしまってもう無理だって。なら、音楽でうまいことやろうみたいな感じで友達をそそのかして(笑)。そこから真剣にやり始めたら、まずメキシコに行けて。キーボードとドラムも入ってメンバーも増え、アメリカ、台湾、韓国、オーストラリア、中国にも呼んでもらったり、ヨーロッパのツアーも2回やりました。

ーー子供の頃、お父さんの話を聞いてイメージした世界を自ら体験しにいく感じですね。

 そうですね。色んなところでライブができて面白い。20代はそういう生活でした。

 

もっと自由にものを作って良いんだと感じさせてくれた人たちへの感謝がある。

ーーDEADKEBABという名前について教えてください。

 友達とふざけて喧嘩した時、テキストのショートメッセージで、お互いを罵り合う遊びが始まったんです。その時「DEADKEBAB」と言われ、友人は多分、道に落ちたケバブぐらいのニュアンスで言ったと思うんですが、面白かったから名前にしたんです。

ーー元々、悪口だったんですね。

 Trippple Nippples時代、DEVOの前座でイーストコーストツアーを一緒に回ったんです。私はDEVOが大好きでボーカルのマークに、自分のイラストを見てもらったんです。そしたらマイク・ジャッジみたいな良い絵だねって。DEADKEBABって名前もかっこいいって褒めてくれて、嬉しくてそのまま変えずに使ってます。

ーー音楽とアートで制作の手法に共通点はありますか? たとえばサンプリングとか。

 初めてサンプリングを面白いと思ったのはDJシャドウなんですよ。どこで探してくるのって音源ばかり使っていて。そこからファンクとかヒップホップを聞くようになって。絵を描く時は…そうですね。影響を受けたモチーフを入れ込んだりすることはあります。例えばモンティパイソンでうさぎに襲われる話があって、そこからサンプリングしたりとか。イメージをそのまま使うというわけではなく、お気に入りのキーワードやキーアイテムを膨らませて形にする感じです。

ーー 今回の個展「BUY or DIE」も普段の生活で目にする商品がモチーフになっています。

 スーパーマーケットをテーマに色々な日用品をリアルな感じで描き、そこにブラックなユーモアを加えています。例えば、これはジャークソースなんですが、向こうでは「気持ち悪いヤツ」みたいな意味があったり。

歯磨き粉の商品名って、クリアって入ってるものが多いけど、これはNUCLEAR(放射線)が入っていたり。

ACCEPT ALL COOKIES」っていうのは訪問したウェブサイトの情報管理に使用されるCookieのことで、あれが出るたび、”受け入れてもいいのだろうか…”って重たい気持ちになるので。

 ぱっと見、普通のプロダクトだけど、そこに皮肉とかちょっと不快に思うことを加え、何か考えるきっかけになったり、実は何もなかったりみたいな、そんなシリーズを「BUY or DIE」で展開して行けたらなと思っています。

ーー 未来の不安とか、テクノロジーへの恐怖心、陰謀論、生きていて誰もが感じる日常の亀裂を乾いたユーモアで笑い飛ばしちゃおうぜって感じがします。

 はい。不安を膨らませて、大げさに誇張すればするほど笑えるみたいな。そういう感覚です。

ーー作品はアナログで描かれているんですか?

 今回出展する作品はキャンバスにアクリル絵の具で描いてます。(Tシャツなどの)プロダクト用のイラストを作る時はiPadで描くこともあります。

ーー制作で大事にされているポイントはありますか?

 言葉を使う作品はキャッチフレーズというか作品を表すパンチラインを思いつくまで結構考えますね。

ーーリリックと同じ。

 まさに、そうですね。

ーーフィメールラッパーとして活動されていて、女性のエンパワーメントを意識されることはありますか?

 SLITSのアリ・アップ、BAHAMADIA、M.I.A.とか影響を受けた女性アーティストがいっぱいいて、もっと自由にものを作って良いんだと感じさせてくれた人たちへの感謝はすごくあります。自分もいつか誰かにとってそういう存在になれたら嬉しいと思ってます。DEADKEBABでの表現に対しては性別を意識してなくて。性別や国籍もよくわかんない感じにしたいなと思っています。

ーー最後に「BUY or DIE」の見どころを教えてください。

 絵の中に記した言葉には色んなメッセージが入っているので、それを楽しんでもらえたらって感じです。あと、個展は今まで東京でしかやったことがないので、京都でやれるのがすごく嬉しいです。



 

ページ上部へ戻る